窓ぎわのトットちゃん  黒柳徹子

「きみは、ほんとうは、いい子なんだよ!」。小林宗作先生は、トットちゃんを見かけると、いつもそういった。「そうです。私は、いい子です!」 そのたびにトットちゃんは、ニッコリして、とびはねながら答えた。――トモエ学園のユニークな教育とそこに学ぶ子供たちをいきいきと描いた感動の名作。

引用:講談社文庫版

1年生で小学校を退学となったトットちゃんが、新しく入学したトモエ学園は、それまで通っていた小学校とは全く違っていました。

大人が読んでも胸がワクワクし、私も参加したい!と言いたくなるような学校生活とともに、トットちゃんの家族やペットのロッキーとの日々が描かれた自伝的物語です。

日本のテレビ女優・タレント第一号である黒柳徹子さんの戦後最大のベストセラー、「窓ぎわのトットちゃん」。
1981年初版で、世界35か国で翻訳されています。
台湾の知の巨人、デジタル担当政務委員であるオードリー・タン氏が学童期に不登校になった時、ご両親に影響を与えた本として再注目されています。

夏休みを前にして、これから子供と過ごす時間が多くなる季節です。
ただでさえ気軽に外に遊びにいくことも難しく、猛暑日が続けば冷房のある室内にこもることも多くなります。
好奇心のかたまりである子供と、一日中室内で過ごすのはなかなか体力と精神力のいることです。

夏休みへの心構えのつもりで「窓ぎわのトットちゃん」を読んでみると、構えていた心の緊張がスッとほぐれます。
この本にはトットちゃんという人一倍好奇心旺盛で、向こう見ずで、純粋で朗らかな女の子の目線で、子供の気持ちが描かれているのです。

読み進めるうちに自分が子供だった頃の気持ちが蘇り、子供に対して深い共感がわき、思い出します。

私も、子供だったんだよね。ということを。

子供は何をするにも
「ねえみてて!」
と言います。

周りにいる大人に、見守られながら、認められながら、やりたいことをやってみたい。

読み終わると、川の向こう岸のように遠かった子供の気持ちの、すぐそばに寄り添っていることに気がつきます。

話言葉が多く、わかりやすい文章なので小学校以上のお子さんなら、一緒に朗読するのもおすすめの本です。
どのお話が面白かった?とお互いに意見を言い合うことで親子のコミュニケーションになりますし、お子さんが読書を始めるきっかけにもなるかもしれません。

年齢、性別を問わず読むことができ、読む年齢や立場で読み方や感想の変わる本でもあります。
一度読んだことがある方も、改めて今、読み返してみませんか?
きっと最初に読んだ時と違った発見、感動があるはずです。

いわさきちひろさんの詩情あふれる挿絵を眺めるのも楽しく、手元に置いておきたい、家族みんなで読みたい一冊です。

 

かみさまからのおくりもの  ひぐち みちこ

誕生のとき、神様が一人一人の赤ちゃんにくださる贈り物。それはその子の個性。子どもは、自分のもらったものに気づき、親は、子が授かった感謝の気持ちに立ち返る印象的な絵本。出産祝いに贈られ続けています。

引用:こぐま社

今月はもう1冊、絵本のご紹介です。
こちらも1984年に発刊されたロングセラーです。
作者が自分の娘のために手作りした本が元となった貼り絵の絵本は、読んでもらう子供だけでなく、読んであげる大人の胸にも響き、初版から40年近い歳月を経てもなお色あせません。

あかちゃんびょういんで生まれた5人のあかちゃんに、神様からのおくりものを天使が運びます。
「よく わらう」「ちからもち」「うたが すき」
「よく たべる」「やさしい」

私はどれ?と子供が考える姿が目に浮かぶような絵本です。

温かい手で優しく背中をなでてもらうなような読後感で、
子供に読み聞かせるのはもちろん、
子育てに行き詰まった時、子供が大きくなって反抗的になる時に、大人が読み返したい絵本でもあります。

子供の個性を尊重することで、子供の気持ちに近くなれる。
今月はそんな2冊を選んでみました。
どんな状況下でも、夏はすべての人にやってきます。
ひと夏でぐんと成長する子供達。見守る喜びを感じながら、暑い夏を乗り越えていきたいですね。